1月28日に松山市で開催した「地域に飛び出す公務員を応援する首長連合サミット」には、首長連合に参加する11名の首長が参加し、古川代表(佐賀県知事)を座長に、地域に飛び出す公務員を応援する施策等について意見を出し合いました。
古川康代表(佐賀県知事)より
・どうして、この首長連合サミットに参加したのか?
・みなさんの地域に飛び出す公務員がいますか?
・地域に飛び出す公務員にどのような応援(制度を含めて)していますか?
・地域に飛び出す公務員に期待することは?
などの問いかけに対し、参加した首長から様々な意見がだされました。
その発言要旨は次の通りです。
千葉県酒々井町 小坂 泰久 町長
- 自分自身が率先して地域活動に参加するようにしている。
- 21,000人余りの小さな町であるので、住民の情報は一番私が良く知っている状態であるが、自分から答えを職員に伝えずに、職員が自ら住民の方々と一緒に考え行動できるように工夫している。
- 定年まで残り少ない幹部職員の気持ちを入れ替えるためにも、やる気のある職員を立候補させて幹部職員になっていただくようにしている。
- 頑張る職員の事例を多く紹介してあげることで、他の職員も安心して積極的に取り組めるのではないか。
滋賀県湖南市 谷畑 英吾 市長
- 職員が地域に入るということが非常に大事なことであり、それが公務と地域おこしが連携する大きなもとだと思っている。
- 飛び出す公務員はいるが全職員ではなく、全職員に広げていかなければならない。まずは幹部職員の考え方も変えなければならないので、幹部職員は企業に1か月間派遣させ、企業の服務規程で働き、人事管理、コスト管理、工程管理など得たことを自分なりに整理し何かをつかみとってくるように言っている。
- まちづくり協議会に幹部職員をアドバイザーとしてつけて、地域間で競争させるなど、職員自らが地域に入っていかなければならないしかけをしている。
- 中堅職員には滋賀大学と連携して、「学びなおし塾」として政策の基礎をフィールドワークや座学で学び政策立案する研修を実施しており、フィールドワークなので地域に出ていかないといけないしかけをしている。
- 若手職員にはオフサイトミーティングへの出席やfacebookの活用を言っている。そのようなところで職員を見ると違った一面を見ることができ、良いところを伸ばすように支援ができると思っている。
- 若手職員ややる気のある職員を伸ばそうとすると、結果として管理職員を疎外されてしまう形になってしまい、組織として機能しなくなってしまう。頑張る職員を伸ばすという事も大事であるが、一人だけを応援するのでは組織の力を削いでしまうかたちになるので、仕組みとしてそれを組織の中できちんと位置付けられるような運営を首長が考えていかないといけない。
滋賀県東近江市 西澤 久夫 市長
- 職員には、たくさん飛び出してほしいと思うので、今日参加している“飛び出す公務員”が、私たち首長にどのようなことを期待するのかを逆に聞き、学びたいと思う。
- 平成23年度から「飛び出す職員応援プロジェクト 東近江」を開始し、その中で「先進地研修制度」を設け、100万円の研修費を予算化している。その予算を活用して、新任職員をはじめ多くの職員が、自分たちで政策課題を整理し研修を行っている。この取組は今後も続けていきたいと思っている。
兵庫県朝来市 多次 勝昭 市長
- 全職員に対して地域貢献をするようにと常々機会あるごとに伝えている。
- 多くの職員はなんらかの形で地域活動に参加しているが、より積極的にかかわり、そうした職員が増えていくようにしていきたい。そして、地域に飛び出すことの意義を一人ひとりが理解し、感じられるようにしていきたい。
- 地域自治協議会ごとに任命している地域担当職員は、現在は2期目に入っており、現職や1期のときに担当した職員が頑張って地域活動を支援している。
- 自分自身も公務で地域に出るときもあるが、地域人としても地域活動、自治会活動に率先して出るようにしている。職員の見本となればと思っている。
奈良県生駒市 山下 真 市長
- 公務員は基礎的な能力もあり優秀な人材が多いが、長年公務員を続けていると発想が内向きになってしまっているのではないか。やっぱり外に出て、いろんな空気、外の発想を身に着けて帰ってきてくれれば、役所においても自主的・主体的に変わってくれるのではないかと期待している。そのためにも、まずは市長が飛び出そうと思っている。
- 子育て世代の職員などは仕事と家庭で手一杯ということもあるので残業の時間を全庁的に減らすことに取り組んだり、ボランティア休暇のような制度をつくったり、地域やNPOなどの活動を通して政策提案した成功例を見つけてアピールするなど、役所として色々とバックアップしていかなければならないと思っている。
熊本県合志市 荒木 義行 市長
- 頑張っている職員はいて、そんな職員は一つ二つと多くのことを頑張っているが、そんな職員をつぶす弁の立つ理屈屋もいるのが最大の邪魔な人間になる。このように職員同士で邪魔をしない職員をつくるにはどうしたら良いかが悩みの種である。若手の職員を政策提案させるような取り組みをして、頑張る職員を応援している。
愛媛県松前町 白石 勝也 町長
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職員に地域に飛び出そうと言うからには、まずは自分から率先して出ないといけないと思っている。
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地域に飛び出す場合は、担当している仕事で地域に行って積極的に説明をするなどのやり方と、一住民として地域の色々な活動に参加するという両面があり、仕事で地域に出向くのは当たり前であり、一住民としての地域活動はもう少し積極的にしてほしいと思っている。
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特定の職員は地域活動においても多方面に積極的に取り組んでいるが、全職員にいかに広げていくかが大事である。特定の人だけが頑張れば、その特定な人にまた依頼がいき偏ってしまうことになってしまうので、全職員が取り組めることが大事である。
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住民総参加で行政運営に協力してもらいたいと思っているので、逆に地域には職員全員参加で地域行事に協力していくようにしていきたい。
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ウィークデーに仕事を休んでボランティア活動をしていると、住民から「仕事を休んで…」って思われ、批判の対象となってしまうので、住民にも理解していただいたり、行政としても制度的に何か考えるなどの支援をしていかなければならないと思っている。まだまだ公務員に対する住民の視線は冷たいものがあるので、住民に理解を求めて説明していくのが首長の役割であると思っている。
愛媛県四国中央市 井原 巧 市長
- 市政は家族経営だと思っている。全部お金で済ませる家族は無くて、ゴミ出しや食事は家の者が役割分担している。一番効率の良い市役所、まちというのは、家族経営に通ずるなあと思っている。市役所の職員は家族で言うと兄貴分になりますから、何も動かずにいるのではなく、家族の中に入って動くのが良いのかなと思う。
- 市長は家族で言えば両親にあたると思っている。子供と会話をしないという事は子どもの気持ちが分からないという事と一緒で、そのためにまずは地域に飛び出していくことが大事なことだと思っている。
- 市の公務員は国や県とは少し違うところがあり、国と県はどうしても転勤族になってしまうが、市町村の公務員は地域から飛び出てきた公務員なので、難しいことではない。ただ、地域が希薄化している、そして住民自治の精神、協働の精神も少し落ちてきているので、地域から飛び出てきた公務員が地域に戻っていただくときには、少々普通に戻るのではなくて、少しカンフル剤的な能力やモチベーションをあげて戻ってもらうことや、コーディネーター役で入ってもらうなどが大事なことだと思っている。
- 市長の想いと公務員の想いの違いは、短距離ランナーと長距離ランナーの違いであり、長距離ランナーが悪いとは思わない。首長は100mの思いでトレーニングをして走るが、公務員は20歳で入ってきて60歳でゴールするのにタイムよりも完走することも考えないといけない。短距離ランナーは走っていて完走は考えず、とにかく全力で走る。だからといって、長距離ランナーの練習方法が間違いではないので議論がぶつかるのは当たり前。その場合、ディスカッションすれば長距離ランナーや短距離ランナーの良いところを活かせるし、両方が共有できる超人が生まれてくると思っている。
愛媛県松山市 野志 克仁 市長
- 常々職員には、地域に飛び出してほしい、現場現地を大切にしてほしいと申し上げている。その理由には、現場には知恵がある、アイデアがある、工夫がある、苦労があると思っている。現場に出たから初めて分かることがあると思う。そういったことを大事にしてほしい。また市民のみなさんと一緒に何かを成し遂げることができたら、良かったなあって感動体験、成功体験も得ることができるので、職員には地域に出てほしいと思っている。
- まちづくり協議会(住民自治協議会)の設立時に職員ボランティアスタッフ約80名が加わり、職員が持つ知識や経験を活かしてもらっている。このように志の高い職員について、職員の前で話す機会があれば紹介をするようにし、高いモチベーションを持った職員を増やしていきたいと思う。
和歌山県新宮市 田岡 実千年 市長
- 市政改革をやっていくうえでの手法は、首長一人だけでの知恵だけでは難しい。首長連合の場で市政改革のヒントも得たいと思っている。
- 公務員と市民とは壁がどうしてもある。この壁をとっぱらって公務員が積極的にまちの活動を市民のみなさんと共に苦労し、共に楽しんでいってほしい。まずは顔見知りになることが基本でそこから始めてほしいと思っている。市民のみなさんと仲良くなることによって市民のみなさんが行政の仕事にも理解をしめしてくれたり、協力していただくことにつながるのではと思っている。
佐賀県 古川 康 知事
- 佐賀県には自己評価書の中に地縁活動や志縁活動について記載する欄があるが、これは必須の記載項目ではないがそのような欄を設けることで、そのような職員を求めていることの表れとしてやろうとしている。
サミットまとめ (古川 代表)
- 首長連合に参加している首長や飛び出す公務員の意識や行動と、飛び出す公務員のまわりにいる公務員の温度が違っているように感じる。だから飛び出す公務員などが、なんとなく動きづらいな、モノが言いにくいなってことがあるので、そうした飛び出す公務員がもう少しモノが言いやすく、行動しやすくするというのが、この首長連合の仕事だと思っている。
- 愛媛県で開催した経緯は、このような首長連合サミット等の開催を通じて、愛媛県内にこのような取り組みを理解してくださる首長の輪を広げようという愛媛県の強い思いがあったからで、そのような思いを愛媛県内の首長さんから確認できたことは良かった。
- 公務員の前例主義を逆手にとれば、前例が一つでもあれば取り組みやすいと言えるわけです。世の中の日本の公務員が考えることは、多くの場合どこかでやっていることがあるはずです。だから、我々の取り組みを情報発信したり、情報共有することをお互いに強めることによって、よりやりやすい環境を整えていくことができるのではないか。