iJAMP連載 ~首長コラム №4~

〇時事通信iJAMPで首長コラム連載中!
〇鈴木 英敬  三重県知事のコラム
(2011年7月28日配信時事通信社iJAMPより)

★現場感覚磨き、地域に果実を

 三重県知事・鈴木英敬

私は、経済産業省に在籍していたとき「スーパー公務員養成塾」を主宰し、全国各地を飛び回っていた。その意味では、「飛び出す公務員」の先駆けと言えるのではないかと思うし、飛び出す公務員の皆さんとは価値観を共有していると自認している。
現在は、三重県知事という特別職になったが、「日本一現場に飛び込む知事」を目指しており、そのスタンスは変わっていない。
今回、「飛び出す公務員を応援する首長としての想い」を伝える機会をいただいたので、そもそも何のために「飛び出す」のかという目的や意義、さらに飛び出して何をするのか、そしてそれをどう成果に結び付けていくのかについて考えてみたい。
自治体が政策を立案し、事業を実施する上で最も大切なことは、「地域住民の皆さんの目線、立場」に立って地域の皆さんに「果実」を届けることである。そのためには、地域に飛び出す必要がある。
よく自治体から国の省庁を評して「霞が関は現場が分かっていない」ということがある。
しかし、あえて言うならば少なくとも、基礎的自治体である市町村に比べて都道府県、特に本庁は概して現場を分かっているとは言い難いのではないか。都道府県庁も「ミニ霞が関」になっていないかと危惧する。
自治体が、国の事業執行官庁であった時代は、それでもある程度は役割を果たせたかもしれないが、政策立案官庁になり、地方政府の役割を果たすためには現場を知る必要がある。
そのために、例えば、自分が住んでいる地域で自治会活動やPTAなどの役員に進んでなってみてはどうかと思う。そして一住民の立場で自分の地域の役所と話をしてみる。そうすると、行政の非効率な部分や住民の皆さんの立場を肌で感じ、自らの仕事の姿勢を見直すきっかけになる。また、地域の役員になって汗をかくことで住民の皆さんと「顔の見える関係」を築くことができ、協働を呼び掛けることができやすくなる。
都道府県は市町村に比べて圧倒的に現場が少ない分、現場感覚を磨くために、休日も使って積極的に地域に飛び出してほしいと思う。
かつて某洋酒メーカーでは「一番優秀な社員は外回りをし、次に優秀な社員が社内を回り、もっともできない社員がデスクワークをしている」と言われたことがある。
この例に学び、志ある公務員は「お役所仕事」という不名誉な言葉を改めてもらえるよう、寸暇を惜しんで、地域に、現場に飛び出してほしい。そして、地域の皆さんに果実を届けるため、その成果を皆さんの自治体の経営に生かしてほしいと切に願っている。
皆さん、ともに汗をかき頑張りましょう!(了)

(2011年7月28日)

鈴木 英敬(すずき・えいけい)氏のプロフィール
1974年生まれ。98年通商産業省に入り、内閣官房参事官補佐、経済産業省地域経済産業グループ地域経済産業政策課長補佐などを歴任。2011年4月の三重県知事選で、現職知事としては最年少の36歳で初当選した。座右の銘は、失敗も成功も自分に原因があるという意味の「万物我に備わる」(孟子)。

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