〇時事通信iJAMPで首長コラム連載中!
〇井原 巧 愛媛県四国中央市長のコラム
(2011年9月15日配信時事通信社iJAMPより)
東日本大震災から早くも半年がたとうとしていますが、復興へのほのかな兆しは感じられるものの、復興まちづくりの道筋はいまだ見えてこず、ただ無情にも時間だけが過ぎ去っているように感じます。そのような情勢の中、自治体を預かる私どもも、歯がゆい思いを抱きながら、できる限りの支援を行っており、被災地支援の庁内公募には多くの職員が名乗り出て、支援活動に赴いてくれています。また、市民や企業の方々からは多くの義援金や救援物資などのご恵贈に加え、現地を訪れて被災者の方々と直接つながる支援活動をしていただくなど、感謝してもしきれないほどのご好意を頂いています。一方では、市職員らがボランティア休暇を利用して現地に赴く動きもあり、頼もしい市民や職員に恵まれ心強く思っています。
さて、そのような中で、私が会長を務めさせていただいております全国青年市長会でも、会員市の連携による独自の復興応援の取り組みを開始いたしました。
まず、この全国青年市長会についてですが、当会は49歳までに当選した市長で構成され、現在57市長が在籍しております。今回の震災で甚大な被害を受けました岩手県陸前高田市の戸羽太市長も会員であり、当会では志を同じくする仲間として陸前高田市の復興を応援する運びとなりました。ただ、陸前高田市も私どもも何をすれば復興の力添えになるか分からず、数人の会員で5月に各界の仲間とともに現地を視察いたしました。津波で流された街を見て、「道路や堤防ができるだけではこの街の復興にはならない。街に図書館などの文化施設、スーパーなどの商業的施設、病院などの医療施設等々、官民の力を結集した都市基盤整備が必要であり、特に地元民間事業者の復興が重要である」と感じました。
そこで、視察を踏まえて何ができるかを協議した結果として「陸前高田市復幸応援プロジェクト」がスタートしました。このプロジェクトでは、陸前高田市に8月から「復幸応援センター」を設置し、会員市の職員が2~3カ月交代で滞在して情報収集を行い、各会員市へ陸前高田市のニーズを発信します。そのうえで対応可能な市民力を持つ会員市をマッチングし市民団体等のネットワーク化により支援の輪を広げていくことを目指しています。私どもが言う市民力とは、各会員市の産業や各種団体などの新しい公共の担い手としての市民の力であり、こうした取り組みが今後の被災地支援のモデル事業となればと思っています。
また、この事業の一番のポイントは被災地での情報収集です。派遣された職員には、被災者や各種団体への思いやりを持って、きめ細やかなニーズをくみ上げ、会員市へ発信してもらいたいと思います。そのためには、地域に飛び出し、住民と親交を深め、心を開いて話ができる関係を構築しなければなりません。ただ、これは公務員と地域住民との本来の関係性であり、地域が変わったからといって肩肘を張る必要はありません。出身自治体の地域住民と触れ合う場合と同じスタンスで向き合い、心の声を聞いてほしいと思います。
私は常々、基礎自治体に属する公務員は、少なからず地域に飛び出し、清掃活動や地域イベントなどに、プライベートな時間を割いて参加してくれていると思っています。そういった職員がより活動しやすい環境づくりを行うことで、地域との絆を深めていただき、災害時や緊急時にも職員と市民の皆さまが協力し合えるパートナーシップを築きたいと思っています。
がんばろう日本!!がんばろう地域コミュニティー!!(了)
(2011年9月15日)
井原 巧(いはら・たくみ)氏のプロフィル
1963年四国中央市生まれ。専修大学卒業後、国会議員秘書を経て、95年より愛媛県議会議員を3期務める。2004年4月、「四国一質感の高いまちを目指して」を公約に掲げ、初代四国中央市長に就任。現在2期目。(了)