〇時事通信iJAMPで首長コラム・インタビュー連載中!
〇中村 時広 愛媛県知事のインタビュー
(2011年8月9日配信時事通信社iJAMPより)
◇職員はどんどん現場に
中村時広・愛媛県知事
松山市長を3期11年半務めたのち、昨年12月に就任した愛媛県の中村時広知事(なかむら・ときひろ=51)。全国で4例目となる課長級昇任試験を今年度から導入するなど、県政の活性化に力を注ぐ。
課長級昇任試験は松山市長時代にも導入。同市では既に10年の実績がある。その理由について知事は「ユニット責任者として権限を付与されるので、それなりのハードルがあっていいと思う」と話す。また、基礎自治体重視の県政を推し進めるため、4月の人事異動に伴い市町との人事交流を大幅に拡大した。「地域に飛び出す公務員ネットワーク」を応援する首長連合の発起人にもなり、「日々の業務で、県職員は住民と直接接する機会がない。どんどん現場に足を運んで、市町の職員ができないことをカバーしてほしい」と訴える。市長時代には、市から権限・財源を移譲する「まちづくり協議会」を地区ごとに設けるなど、現場重視の政策を行ってきた。
再稼働が見送られている伊方原発3号機については、「再稼働は白紙」と繰り返し強調。一方で、四国電力に対しては、(1)原子力本部の松山市移転(2)国の求める電源対策に加えた追加的な電源対策(3)独自の揺れ対策(4)異常があった場合は速やかに県へ連絡する「伊方方式」の報告体制(5)半径20キロ圏内住民の全戸訪問―の五つの要望を突き付け、実現させた。中村知事は「四国電はこちらの要望に全部応えた。他とは全然状況が違う。あとは経済産業大臣が来て、僕と話し合って文書で安全・安心を確約をすることが必要。その後、地元や安全委員会に(稼働の可否を)投げ掛けたい」と語る。
全国知事会では社会保障制度を担当する。6月の国との意見交換会では、持ち前の積極性で与謝野馨経済財政担当相とやり合った。「(財務省からは)消費税をどれだけ上げる必要があるかという資料しか出てこず、地方の事業などが全く出てこない。消費税を上げるための財源会議のようになっている。国は地方の現場を知らない」。
市長時代から目指していた、四国へのプロ野球球団誘致にも熱心だ。東北楽天イーグルスや日本ハムファイターズを誘致した宮城県や北海道のような地域活性化が狙いだ。「四国4県で唯一、(松山市の)坊っちゃんスタジアムだけが3万人を収容できる。公式戦は中心を坊っちゃんにして、残りを3県で消化するのが理想。これから足りないものを洗い出して分析していく」とビジョンを語る。
〔横顔〕
東京で商社マンとして働き、愛媛県議を経て93年衆議院議員に初当選(1期)。99年松山市長となり、10年12月から知事に。趣味はジョギングで、週に1~2日走っている。
〔県の自慢〕
「たくさんあるが、東予2次、中予3次、南予1次というように、地域ごとに産業別の特徴があること。見事に産業基盤が分かれている。これからの戦略を考えるに当たって大きな自慢になる」(中村知事)。
〔ホームページ〕http://www.pref.ehime.jp/
(松山支局・石坂千絵)(了)(2011年8月9日配信)